解剖学が教えてくれないこと1
日本でバレエ指導を続けるには
1) 伝統に忠実であろうとするのか
2) バレエ以外の知識を取り入れようとするのか
この2つのうち事実上
2) バレエ以外の知識を取り入れようとするのか
こちらしかない、とお話しました。
そこに、解剖学が救世主として登場したわけです。
そこに飛びついた多くのバレエ教師や治療師は
「救われた!」
と思ったかもしれません。
当方もその口(^^;
ところが、ひとつ問題が隠れていました。
隠れているので、未だに気づいていない人もいるはず。
典型的な例は、
「ターンアウトはどの筋肉でするか?」
です。
解剖学を学んだ人は、おそらくこう答えます。
「外旋六筋」
バレエ教授法には出てこない言葉の一つです。
ロシアのバレエ団のプリンシパルに聞いても多分
「何それ?」
と聞き返されるかも知れません。
でも、解剖学で学んだから、答えは
「外旋六筋」
生徒にも
「外旋六筋でターンアウトするんですよ。」
「外旋六筋に力を入れて!」
と指導しているかも知れません。
でも、ここで2つ、「そもそもな問題」があります。
■解剖学が教えてくれないこと1
そもそもどの動きも特定の筋肉を意識して行われていない。
たとえば、
溢れそうなコップの水を、
こぼさずに口に運んで飲む。
一度はやったことありますよね?
この動作をするとき、どの筋肉にどの程度力を入れるか意識しているでしょうか?
恐らく意識していないはずです。
意識しているのは、せいぜい、スタートとゴール、途中のスピード。
その程度ではないでしょうか?
解剖学的に参加する筋肉名を列記すると、
・長掌筋
・橈側手根屈筋
・母指内転筋
・上腕二頭筋
・三角筋前部線維
・脊柱起立筋
・多裂筋
・腹横筋
などなど(実際はもっとたくさん)。
に力を入れて、こぼさないように随時力を微調整しながら口元まで運ぶ。
何てことをしているわけです。
これ一つ一つの筋肉に対して随意的に命令を送っているでしょうか?
そんなわけないですね。
水をこぼさないように上手に運ぶには
「橈側手根屈筋のコントロールが大事です。」
と言われたとして、それ出来ますか?
多分、出来ないと思います。
「そもそも無理(> <)」
なわけです。
では、ターンアウトだと出来るのでしょうか?
「外旋六筋に力を入れて!」
「特に、●●筋が大事です!」
言っていることは正しいんだけど、虚しい指示出しになっているということが、お分かりいただけるでしょうか?
解剖学セミナーなどでは、教えた側も学んだ側も
「良い学びになった(^^)」
と、満足度は高いかもしれません。
でも、それはレッスンには生かされないわけです。
そもそも
人の動きは個々の筋肉を随意的にコントロールする形では行われていない
のです。
解剖学的には正しいけど、実際には使えない。
これが、
「解剖学が教えてくれないこと」
の一つ目です。
二つ目は、次回。
↓
https://balletup.com/?portfolio=too-cut-anatomy
最後までお読み頂きありがとうございました。
長岐裕之
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