縦から横でバレエの理解が深まりました
「バレエって難しい(>_<)」
って思ったことはありませんか?
なぜ難いのか、
その理由は複数あるので
「これ!」
と断定できないのですが、
相談で多いのは、
大人でも子どもでも共通して
「あたふたする」
です。
手を意識すると、足がおろそかになる。
足を意識すると、手がおろそかになる。
みたいな状況ですね。
これは、
バレエの動きが上半身と下半身で別物だったりするから起こります。
さらに、
動きが合っていても音楽に合っていないと踊りになりませんし、
役柄と場面に応じて演じてないと
「何踊っても同じね(-_-)」
とか言われかねない。
その上、
他のダンサーと息を合わせることも必要。
やること多すぎ(´Д`;
と追い込まれた状態が
「あたふたする」
の正体です。
そんな風に、
複雑に絡み合った要素を見事にコントロールしているのが
ポリーナだったり、
ヴィシニョーワだったりな訳です。
(姓と名がごっちゃ(^_^;)
何度観ても惚れ込むような踊りですが、
何度観ても同じ様に踊れる様にはなりませんね(>人<;)
一体どうしたらあんな風に踊れるようになるのでしょう?
彼女達も最初は素人。
バレエ学校で学んで上達した訳です。
さて、
どうやってあそこまで上達したのでしょう?
■二つの学習形態
踊りに限らず学習の形態には大きく分けて二つあります。
A. 見たままを丸ごと真似ていく
B. 動きを構成する要素に分けて一つずつ学ぶ
YouTubeを観て振りを入れるとか、
先生のお手本をよく見て真似るとかがA。
一方、
1. プリエ
2. 片足ルルベ
3. ルティレ(パッセ)
4. ターン
5. スポット
をそれぞれ練習してから
1 + 2 + 3 + 4 + 5 = ピルエット
とかがB。
それぞれ名前が付いていて
Aを全習法
Bを分習法
と呼んだりします。
Aは天才肌のダンサーに向いています。
みんなと同じ様にレッスン受けているのにどんどん上手になっていくような生徒さん。
見たことありませんか?
そんな生徒さんは、基本的にAで行くと上達が早いです。
Bは天才肌もそうでないダンサーも、
レッスンに着いて来られる限り、
上達の階段を登り続けることが出来ます。
なら、
最初からBにしておけば全員上達出来るから良いのでは?
と考えることもできますが、そうでもありません。
地味なんです。
プリエの練習
片足ルルベの練習
とか…
地味でしょ?
一方、
Aは、作品を見てさっさと踊ってしまう。
毎回作品が踊れる!
楽しそうでしょ(^ー^)
長く続けるということを考えると、Aの要素は大切ですね。
でも、
天才肌ではない多くの生徒さんが上達するにはBの分習法が不可欠。
これがないと、
一人か二人の飛び抜けて上手な生徒と、
陽の目を見ないその他大勢、
のような実力構成になってしまいます。
生徒全員からお月謝を頂いている教室として、これは良くないですね。
特定少数ではなく、最大多数の上達を目指すのがBの分習法となります。
ただし、
ただステップを分解して学べばいいと言うものでもありません。
■B分習法は順番が大事
実は、
どの順番で学ぶかによって、
到達できる実力に差が生まれてしまうんです。※
先程の例だと
1 + 2 + 3 + 4 + 5 = ピルエット
と書きましたが、
順番を変えた
3 + 4 + 5 + 1 + 2= ピルエット
の方が上達が早い。
とか、そういうことです。
いま順番は適当に書いてます。
なので、
■バレエ教師の仕事
バレエ教師がアンシェヌマンを組むとき、
構成の出来不出来によって、
生徒さんの上達度に差が生まれます。
同じ時間
同じ回数
同じ動き
を学んだとしても、
順番次第で生徒さんの実力が違ってくる
ということです。
バレエ教師の役目は重要ですね。
自分が学んできた順番をおうむ返しにしていている場合ではないんです。
どういう原則にのっとったら良いか?
そのヒントは同じ文献に学術的な考察の元に解説されています。※
こう言った研究は、バイオメカニクスが発展してきた今まさに進行形です。
だから、
バレエ教師は新しい論文を読まないとベストなアンシェヌマンは組めない
なんてことはありません。
ε-(´∀`*)ホッ
■過去の偉業
実はいまから80年以上前に、
バレエのステップを要素に分けて、
どの順番で提示したら効果的か、
研究した人がいます。
しかも、
バレエの初心者から上級者までを網羅する
アンシェヌマンの組み方を体系化して
後世に残しています。
誰だか分かりますか?
そう、
アグリッピナ・ワガノワ先生です。
見て真似れば済む指導ではなく
ステップを分解して個々に教えれば済む指導でもなく
・個々の動きをどの順番に提示し、
・どの動きと組み合わせ、
・音の取り方をどう変化させ、
・学年毎にどう発展させて言ったら良いのか示し、
・1年生から8年生までを体系化した
訳です。
この偉業により、
バレエ教師はダンサーと一線を画すことになりました。
ダンサーとしての経験をもとに教える「バレエ指導者」と
バレエ教授法を修得した「バレエ教師」の違いがそこにあります。
■ワガノワ教授法を縦から横に
ワガノワ教授法では、
学年ごとの指導内容を学んでいきます。
ところが、
教師課程の最終試験では、
ステップ別にどう発展させていくかが問われます。
この問題に答えるには、
いままで学年別に並んでいた指導内容を一旦ばらして、
ステップ別に横に並べていく作業が必要となります。
その上で淀みなく生徒を導くことができたら合格。
できなければ不合格。
あのワガノワバレエアカデミーですので、
教師とて努力賞はもらえません。(-_-メ
でも、
最終試験で問われるということは
正にこの理解が現場の教師に必要な能力
ということの査証でもあります。
この並べ替えを行ったノートの写真と概要をブログで紹介しました。
興味ある方は、下のボタンを押してご覧ください。
もしかすると、
大人からバレエを始めた生徒さんにとっては、
こういう情報の共有が
レッスンには出てこない、
それでいて上達へ導く知識になるのかも知れません。
■見分け方
先程出てきた
・バレエ指導者
・バレエ教師
似てますね。
呼び名はどちらでも良い気もしますが、生徒さんが得られる学びは大きく異なります。
この二つの簡単な見分け方があります。
それについては別の機会に。
参考文献
※ 「全習法と異なる二種の分習法での運動学習効果の検討」
米田ら、理学療法科学 29(5):809–813,2014
最後までお読み頂きありがとうございました。
イカ足サポーター開発者 長岐裕之
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